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ERGの主な成果

  • 太陽面爆発に伴う宇宙嵐や高速風に伴う宇宙嵐などを多数観測し、放射線帯高エネルギー電子の消長を観測
  • 第24太陽活動周期の最終局面(グランドミニマム)をVan Allen Probes とともに観測
  • 2020年から始まった第25度太陽活動周期の立ち上がり期間を観測中。Van Allen Probes(2012-2019) とあわせて、1太陽活動周期の観測実現へ
  • 米国Van Allen Probes、DSX衛星をはじめとした海外の衛星群との協調観測を数百回以上回 実施し、国際ジオスペース衛星探査群の一翼を担う。 また、EISCAT(欧州非干渉散乱レーダー)やPANSY(南極昭和基地大型レーダ)、 SuperDARN(国際HFレーダーネットワーク)をはじめとした地上観測ネットワークとの同時観測を6000回以上実施。新学術領域や、特別推進、基盤Sなどの大型研究の支援を受けた観測点の拡充。

ERG Nuggets

2022年1月15日4時10分(世界時)ごろに南太平洋トンガ沖海底火山で発生した大規模な噴火は、強烈な気圧波と高速で伝搬する津波を引き起こし、その影響が地球大気圏上部である電離圏にまで到達していることが知られています。しかし、その影響がどの高度領域まで及んでいるかはわかっていませんでした。そこで、全球測位衛星システム(GNSS) 、気象衛星ひまわり、ジオスペース注3)探査衛星「あらせ」、電離圏観測機器などのデータを解析することにより、通常よりも1~2桁程度、電子密度が急減する多数の電離圏の穴が日本上空で出現していることが分かり、探査衛星「あらせ」の観測によってこの電離圏の穴は、2,000kmの宇宙空間まで伸びていることが分かりました。また、電離圏の穴の形成は、電離圏の高度上昇が原因であったことと、その高度上昇は火山噴火による気圧波の到来よりも約1-2時間も前に起こっていたことが分かりました。本研究は、このような火山噴火に伴って発生した大気変動による電離圏の穴の生成機構を明らかにしました。また、電離圏の穴は電波障害の原因であり、宇宙天気の観点で予報が必要な項目です。電波障害を起こす宇宙天気現象は、太陽フレアなどの太陽活動に起因することが広く知られていますが、本研究結果は、宇宙天気現象が大規模噴火等の地表の現象にも起因することを明示する重要な事例です。

Generation of equatorial plasma bubble after the 2022 Tonga volcanic eruption Atsuki Shinbori, Takuya Sori, Yuichi Otsuka, Michi Nishioka, Septi Perwitasari, Takuo Tsuda, Atsushi Kumamoto, Fuminori Tsuchiya, Shoya Matsuda, Yoshiya Kasahara, Ayako Matsuoka, Satoko Nakamura, Yoshizumi Miyoshi, and Iku Shinohara, Sci. Rep. 13, 6450, 2023 https://www.nature.com/articles/s41598-023-33603-3
Scientific American(アメリカ)
Daily Telegraph(イギリス)
New Scientist(イギリス)
Fox News(アメリカ)
CBS News(アメリカ)
Sky News(オーストラリア)
NBC(アメリカ)
Le Matin(スイス)
CNET(フランス)
日本経済新聞
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Rukuten infoseek News
Tii技術情報
財経新聞
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JST 科学技術振興機構「サイエンスポータル」
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2022年のフンガ・トンガ噴火
宇宙科学研究所プレスリリース
情報通信研究機構プレスリリース
東北大学プレスリリース
電気通信大学プレスリリース
名古屋大学プレスリリース
金沢大学プレスリリース
京都大学プレスリリース

瞬間瞬間のイオンの速度や運動方向と電波の向きや強さを詳細に対応づけてゆく「波動粒子相互作用解析」の手法を新たに開発し、「あらせ」衛星のイオンと電波の観測データに適用することで、その典型的な事例、すなわち、宇宙空間に存在する磁気音波と呼ばれる電波がイオンを温め、さらに、温められたイオンがまったく別のイオン波 (電磁イオンサイクロトロン波) と呼ばれる電波を新たに作り出している証拠を見つけ出すことに成功しました。磁気音波はエネルギーの高いイオンによって生成されると考えられています。また、作り出されたイオン波は相対論的な速度を持つ超高エネルギー電子と相互作用できると考えられており、バン・アレン帯の電子の一部を散乱によって消失させる効果を持っています。今回の発見は、エネルギーや起源が異なるイオン・電子が電波を介してエネルギーをやり取りする過程の一端を実証的に観測したもので、宇宙空間に存在するイオン・電子のエネルギーの多様性の説明につながる重要な成果です。

Cross-Energy Couplings from Magnetosonic Waves to Electromagnetic Ion Cyclotron Waves through Cold Ion Heating inside the Plasmasphere Kazushi Asamura, Masafumi Shoji, Yoshizumi Miyoshi, Yoshiya Kasahara, Yasumasa Kasaba, Atsushi Kumamoto, Fuminori Tsuchiya, Shoya Matsuda, Ayako Matsuoka, Mariko Teramoto, Yoichi Kazama, and Iku Shinohara Phys. Rev. Lett. 127, 245101, 2021 https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.127.245101
マイナビニュース
中日新聞 宇宙科学研究所プレスリリース
名古屋大学プレスリリース
金沢大学プレスリリース
京都大学プレスリリース
九州工業大学プレスリリース

電磁波による宇宙の環境変動を正しく理解するためには、広い宇宙空間を波がどのように伝わっていくかを三次元的に知ることが重要ですが、従来の科学衛星1機による観測では実現が困難でした。 「あらせ」「Van Allen Probes」で同時計測された電磁波のデータなどを用いて、宇宙の電磁波が発生する領域を明らかにしたとともに、目には見えない“電磁波の通り道”の存在を世界で初めて突き止め、電磁波が地上へと伝わる仕組みを解明しました。各国が開発した高性能な科学衛星や地上観測装置が連携することで、宇宙環境を立体的にモニタリングできることを示し、将来の宇宙天気予報*3の精度向上に向けた大きな一歩となることが期待されます。

Multipoint Measurement of Fine-Structured EMIC Waves by Arase, Van Allen Probe A, and Ground Stations S. Matsuda,Y. Miyoshi,Y. Kasahara,L. Blum,C. Colpitts,K. Asamura,Y. Kasaba,A. Matsuoka, F. Tsuchiya,A. Kumamoto,M. Teramoto,S. Nakamura,M. Kitahara,I. Shinohara, G. Reeves, H. Spence, K. Shiokawa,T. Nagatsuma, S. Oyama, and I. R. Mann, Geophys.Res. Lett., 48, e2021GL096488, 2021
北國新聞 朝刊 (2021.12.09)
金沢大学プレスリリース
名古屋大学プレスリリース
東北大学プレスリリース
情報通信研究機構プレスリリース
宇宙科学研究所プレスリリース
東北大学プレスリリース

笠原慧他、「明滅するオーロラの起源をERG(あらせ)衛星が解明」 (2018年2月14日)

尾崎光紀他、「世界初!地球近傍の宇宙で発生するプラズマと電磁波の相互作用発生域の可視化に成功」 (2019年1月16日)

今城峻他、 「オーロラ粒子の加速領域は超高高度まで広がっていた -オーロラ粒子の加速の定説を覆すあらせの発見-」(2021年1月18日)

あらせ衛星による64kHzサンプルでの波形観測と、地上での100Hz光学観測データの比較から、コーラス波動バーストおよびライジングトーンと、脈動オーロラの主脈動(数秒)、内部変調(数百ミリ秒との1:1の対応関係の特定に成功。脈動オーロラの多層時間スケールの起源が、磁気圏プラズマ波動であることを同定。

あらせ衛星、Van Allen Probes衛星による電磁イオンサイクロトロン波動の多点同時観測および 地上VLF観測による高エネルギー電子降り込み観測から、電磁イオンサイクロトロン波動と電子の 相互作用領域の特定に成功(GRL Editor’s Highlightに選出):1の対応関係の特定に成功。脈動オーロラの多層時間スケールの起源が、磁気圏プラズマ波動であることを同定。